こんにちは、ピコセラ社長の古川です。今回は、いよいよ、ピコセラのメッシュWi-Fi技術についてお話をしたいと思います。
前回のブログでご説明した通り、「最少ホップ数で、中継の都度、次の中継機を決める方法」の問題点をピコセラがどう解決したかお話していきます。
「最少ホップ数で、中継の都度、次の中継先を決める方法」の問題点
「最少ホップ数で、中継の都度、次の中継機を決める方法」は、一見するととても理に適った方法のように思えます。
しかし、現実には電波特有の問題により、上記はあまり良いメッシュWi-Fiの実現法ではありません。
詳しくはこちら⇒第4回ブログ「メッシュWi-Fiは厄介なり」
厳密には、メッシュクラスター(*1)サイズが2~3個の小規模なメッシュ網では、そこそこ動作しますが、クラスターサイズがそれ以上の大規模なメッシュになると、とたんに中継効率が劣化します。
(*1)LANケーブルでインターネットに接続されたノードとこれにメッシュWi-Fiで接続されるノードで構成される一つのグループ
私はこの問題をどう解決したか?
あまり詳しく説明すると専門的になりすぎるので、その原理についてほんのさわりの部分だけ、ご披露したいと思います。
ピコセラの解決法
「最少ホップ数が良し」の常識を捨て、
「中継の都度、中継先を決めるが良し」の常識を捨てたのでした。
ピコセラの無線中継技術は、2つのパートで構成されています。
中継経路を固定で決めてしまうこと
そのうえで、各中継ポイントがある規律に沿って慎重に無線信号を中継すること
この2つ。
中継経路を固定的に決める手法は、数多く存在します。
固定的に決めてしまうことが重要です。
一度決めれば、めったなことでは変化させない。
「中継の都度、中継先を決める」の真逆です。
ある中継ポイントから次の中継ポイントへ信号を中継する際、常に同じ中継先へ中継するのです。
また、最少ホップ数であることを重視しません。
安定した中継経路の獲得、こちらを重視します。
急がば回れの発想
こうすることによって、各中継ポイントから他の中継ポイントに至る干渉が安定的にパターン化され、規律ある無線信号の伝送手法と組み合わせることで、電波干渉をよく抑制できることが分かりました。
さてその規律とは・・・?
規律とは、
決められた中継経路上を流れる無線信号同士が干渉しないように、各中継ポイントが、事前に決められたあるルールに基づいて中継伝送すること。
常識を否定したうえで、気が遠くなるほどの実環境での実験によりたどり着いた上述の中継方法は、現実世界の通信トラフィックパターンとよく整合し、良好な無線マルチホップ中継が行えることを見出しました。
現代の通信トラフィックの出現パターンはとても複雑です。
昔のように単純な音声のオン・オフモデルでは説明できません。
通信網の最適解は、常に発生する通信トラフィックのパターンに強く依拠します。
現代の通信網では通信品質の保証が極めて困難・・・その理由はここにあります。
実際にピコセラが実現しているプロトコルは、もっと複雑で複合的です。すべてがIPパケットとして取り扱われる現代の通信トラフィックを伝送するためによく適した実効性のあるプロトコル群(これをプロトコルスイーツと呼びます)により構成されています。
いかがですか?ピコセラのメッシュWi-Fiは他とは違うユニークな方法であることを少し感じて頂けたでしょうか?
さて次回は、少し話題を変えたいと思います。
乞うご期待!
著者
PicoCELA株式会社
代表取締役社長 古川 浩
NEC、九州大学教授を経て現職。九大在職中にPicoCELAを創業。
一貫して無線通信システムの研究開発ならびに事業化に従事。工学博士。