こんにちは、PicoCELA社長の古川です。いよいよ今回から数回に渡り、私たちが長年、研究開発を進めてきたメッシュWi-Fiテクノロジー(*1)についてお話をしたいと思います。
(*1)PicoCELAの無線メッシュテクノロジーはWi-Fiに限らず様々な無線方式に適用可能ですが、ここではWi-Fiと組み合わせた形態の話をしたいと思います
そもそも無線ネットワークってどう成り立ってるの?
昨今の無線ネットワークはとても複雑な構成ですが、おおざっぱにとらえると、基幹網、基地局網、そしてアクセス網の3つで構成されます。
私たちが日常利用している公共交通網にたとえると、
「基幹網」は飛行路線や新幹線、鉄道本線
「基地局網」は一般鉄道路線
「アクセス網」は路線バスやタクシー
・・・といった感じでしょうか。
ここで、基地局網のことをバックホールと呼びます。
バックホールとは、backhaul(backholeではないのでご注意!)と書きます。背後(back)で輸送(haul)するという意味で用いられている通信業界の専門用語です。
「背後」というニュアンスが少しわかりにくいですが、この言葉を考えた人は、おそらく人々が直に接するアクセス網が手前にあるネットワークだとすると、基地局網は背後にあるから、そう名付けたのかもしれません。
ピコセラの無線メッシュは、バックホールのため
Wi-FiとかLTEとか5Gとか世間で言及されている無線技術は、ほとんどがアクセス網のことを指します。
しかし、ピコセラは、バックホールに着目しているとても地味な会社なのです(笑)
なぜバックホールに着目?
高品質な無線環境を構築するためには、高密度に基地局を設置する必要があります。
⇒第一回ブログ参照
たとえば10m間隔で基地局を設置する場合。
頭上を見渡せば、2~3局の基地局が視界に入ってくるような状況です。
それぞれの基地局は基幹網へ接続する必要があります。しかし、10m間隔で設置された基地局に、いちいち、LANケーブルを配線することは現実的でしょうか?
かなり無理がありますよね?
そこで、私はLANケーブル配線が不要な基地局を実現しよう!、と考えたわけです。
LANケーブル配線を不要にするためには、有線ではなく無線を使えばよい、ということになります。
各基地局同士が互いに無線で中継しあって、どこか起点となる基地局だけがLANケーブルで基幹網に接続してしまえば、とても簡単に、基地局が設置できます。
メッシュWi-Fiは、基地局同士を互いに無線で結ぶ
「各基地局同士が互いに無線で中継しあう」、この様子を以下に描いてみました。
基地局Aから、LANケーブルで基幹網に接続された基地局Dまで、途中に基地局BとCが介在し、中継を行っています。合計3回の中継が行われています。これを「無線多段中継」とか、「無線マルチホップ中継」などと呼びます。
一回の中継のことを、「1ホップ」と呼ぶことがあります。
Hopというのは、ホップ・ステップ・ジャンプの「ホップ」のことです。
ところで、別の中継の仕方もあるでしょう。
あるいは、こういう中継の仕方もあります。
いやいや貴方ならこういう中継がカッコよいと感じるかも・・・(笑)
このように、中継パターンにはとてもたくさんの組み合わせがあることがお分かりになるかと思います。
そこで、各基地局同士を線で結んで、以下の図のような経路図でこの様子を表現することがあります。
上の図をみると、基地局を結ぶ線が網の目状に交差していることが分かります。
そこで、このような無線多段中継で形成されるネットワークを、無線メッシュネットワーク、あるいは単に、無線メッシュと呼んでいるのです。
Wi-Fiに適用すれば『メッシュWi-Fi』ということになります。
ということで、今回はここまで。
次回はメッシュWi-Fiで実際に無線中継を行う場合に起こる、様々な問題を眺めていきたいと思います。
乞うご期待!
著者
PicoCELA株式会社
代表取締役社長 古川 浩
NEC、九州大学教授を経て現職。九大在職中にPicoCELAを創業。
一貫して無線通信システムの研究開発ならびに事業化に従事。工学博士。