広大な農場(東京ドーム約7個分)全域でのフィールド学習を実現。DXハイスクール事業を活用し、生徒の課題解決学習を加速

広大な農場(東京ドーム約7個分)全域でのフィールド学習を実現。DXハイスクール事業を活用し、生徒の課題解決学習を加速
導入企業: 宮城県農業高等学校
導入製品: PCWL-0510 5台
活用分野: 文教、農業、DX推進、探究学習

創立140年。広大な敷地を誇る日本最古の農業高校

宮城県農業高等学校は、創立140年を迎える日本最古の歴史を持つ農業高校です。敷地面積は31ヘクタール(東京ドーム約7個分)に及び、畑、畜産、牧草地、水田など広大な実習地を有しています。

同校は戦後すぐから地域課題の解決に取り組む「プロジェクト学習」を実践し、日本学校農業クラブの全国大会「プロジェクト発表会」では4年連続最優秀賞を受賞するなど、探究的な学習の先駆者として高い実績を誇っています。

しかし、その学校敷地の広大さゆえに、農場での学習活動におけるネットワーク環境の整備が長年の課題となっていました。今回、その課題解決に向けた取り組みと導入後の活用状況について、農場部長である尾身 宜彦先生にインタビューを実施しました。

尾身 宜彦 先生

尾身 宜彦 先生

「以前から学校の広さゆえにWi-Fi環境の重要性は感じていました。生徒が外に出て実際の雑草や病害虫を調べたり、栽培データを集めたりする際に、ネットワーク接続がないと、せっかくのフィールド学習が分断されてしまうという不便さがありました。」

導入前の課題:通信の「届かない」が教育活動の足かせに

同校がPicoCELA導入前に直面していた主な課題は以下の3点です。

1.広大な実習地での「学習の分断」

従来のWi‑Fi環境は校舎内のみに限定され、広大な農場や実習地までは電波が届きませんでした。生徒がタブレットを持ってフィールドに出ても、その場でデータ収集や情報検索ができず、一度校舎に戻って作業を行う必要があり、学習効率が低下していました。

2.DXハイスクール事業活用の壁

文部科学省のDXハイスクール事業(高等学校DX加速化推進事業)を活用し、スマート農業教育を本格化させる方針でしたが、広大な敷地に有線ネットワークを敷設する場合、工事費だけで1,000万円以上かかる試算となり、コスト的に現実的ではありませんでした。また、既存ネットワークの屋外への拡張も、保守・セキュリティの観点から県の承認を得ることが難しい状況でした。

3.共同作業・リアルタイム学習の限界

課題研究において、生徒が現地で生育調査のデータや写真を収集しても、その場で共有しグループで共同作業をすることが困難でした。これまでは一つのPCを交代で使うなど、リアルタイムな作業ができないため、学習の深化に課題がありました。
導入前の課題:通信の「届かない」が教育活動の足かせに

PicoCELA選定の決め手:コスト効率、広域カバー、容易な拡張性

広域をカバーしつつ、設置や工事のコストを抑えられるソリューションを模索する中で、NTTドコモビジネスからの紹介を受け、PicoCELAの導入を決定しました。

1.「これだ!」と感じた広域カバレッジ

他社の提案では大規模な光ファイバー埋設工事が必要とされる中、PicoCELAは無線メッシュによる広域カバレッジが可能である点が最大の決め手となりました。「現場でのリアルタイムな学習を実現するため、遠くまで電波を飛ばす必要があり、PicoCELAの活用提案を聞いて『これだと思った』」と尾身先生は語ります。

2.圧倒的な工事・設置費用の抑制

従来の有線ネットワーク構築と比較し、工事・設置費用を大幅に抑えることができ、DXハイスクール事業の予算内で収めることができました。工期自体もわずか2〜3日で完了し、短期間でのネットワーク構築が実現しました。

3.容易な拡張性

アクセスポイントを「ポンポン増やせる」という拡張性の高さも、31ヘクタールという広大な敷地を持つ同校にとって大きな魅力となりました。これにより、今後の教育内容の進展に合わせて、柔軟にエリアを広げていくことが可能です。
PicoCELA選定の決め手:コスト効率、広域カバー、容易な拡張性

導入後の活用と効果:グループ学習の深化とデータ駆動型教育への第一歩

PicoCELA導入により、広大な農場は生徒たちの「学びのフィールド」へと変貌を遂げました。

課題研究におけるリアルタイムな共同作業の実現

最も進んだ活用として、生徒40名が同時にタブレットを使用し、フィールドでの課題研究を行っています。
雑草調査の効率化: 畑で雑草の写真を撮り、タブレットでその場で検索・調査。そのデータをGoogleスライドで共有し、グループで共同してレポートにまとめる作業が可能になりました。
学習の質向上: これまで個人でバラバラに行っていたデータ収集や分析を、ネットワークを通じて現地で即座に共有・集約できるようになったことで、「1人1人でやっていたことをグループでやれるようになったのは大きい」と尾身先生は効果を実感されています。

遠隔・オンライン授業の実施

温室内に設置されたネットワークを活用し、作物の天敵に関するオンライン講話を温室で実施。遠隔地にいる専門家とのリアルタイムな連携を、実習の現場で実現しました。

卒業後の農業を担う「IT技術」の習得

生徒の多くは、卒業後、大学や農業大学校、農業系の専門学校への進学が増加傾向にあります。同校は「農業と情報」「情報Ⅰ」「情報II」など、情報技術に関する授業を多く提供しており、PicoCELAによるネットワーク環境は、生徒たちが将来、農業法人や地域社会でスマート農業やDXを推進する担い手となるための基礎技術を習得する基盤となっています。
導入後の活用と効果:グループ学習の深化とデータ駆動型教育への第一歩
導入後の活用と効果:グループ学習の深化とデータ駆動型教育への第一歩

今後の展望:スマート農業教育と地域連携の加速

尾身先生は、今後PicoCELAを活用したネットワークをさらに発展させることで、以下の教育活動を目指しています。

データ駆動型農業教育の推進

「今後は、養水分や気温・地温などを計測するセンサーをネットワークに繋ぎ、リアルタイムでデータを収集・分析する『データ駆動型』の農業教育を進めたい。生育調査データもグラフ化し、農業における『経験則』に『データ』という根拠を組み合わせた新しい担い手を育成したい。」とのこと。

リアルタイム遠隔連携の強化

小学校や大学の先生方と農場をオンラインでつなぎ、リアルタイムでの栽培状況の報告や、専門家からのアドバイスを授業に取り入れるなど、地域や専門機関とのオンライン連携をさらに強化したいと考えています。

将来的な予算化と利用促進

また、将来的には県の予算化を目指すため、生徒がネットワークの利便性を享受し、当たり前に活用できる環境を整え、その必要性を積極的にアピールしていくという強い決意を持たれています。
導入後の活用と効果:グループ学習の深化とデータ駆動型教育への第一歩
販売店: NTTドコモビジネス株式会社
施工: エクシオグループ株式会社

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