トンネル建設現場における緊急通報のための通信環境整備

PicoCELAのメッシュWi-Fi技術で、LAN配線なしにトンネル建設現場へStarlinkの通信エリアを拡張
導入企業: 株式会社イートラスト
https://www.etrust.ne.jp (外部サイト)
導入箇所: 新潟県国土交通省施工中トンネル国道289号八十里越(8・9号トンネル)
導入製品: PCWL-0510×5台
指向性アンテナ×15台
導入内容:

PicoCELAのメッシュWi-Fi技術で、LAN配線なしにトンネル建設現場へStarlinkの通信エリアを拡張

延べ3.5km以上のトンネル建設現場において、入口に設置したStarlinkを元回線として使用。PicoCELAのPCWLメッシュWi-Fiアクセスポイントと指向性アンテナを適切に配置し、閉鎖空間のトンネル内でも安定した通信環境を構築しました。緊急時の通信手段だけでなく、業務用途としても活用されています。

株式会社イートラストのご紹介

株式会社イートラスト(以下、「イートラスト社」といいます。)は、電気・情報通信事業をコアに、防災や環境といった公共性の高い事業で多数の実績を有している会社です。実現が難しそうなご要望に対しても、「できない」と言う前に「どうしたらできるのか」を考える精神を大事にされており、これまでも高度な技術による優れた品質を維持することで、多くの社会貢献を実現されています。

建設中のトンネルにPicoCELAを導入し、通信環境を整備

今回のPicoCELA導入事例は、そのイートラスト社の現場の一つである「国道289号八十里越」が舞台です。「国道289号八十里越」は、実際の距離は八里(約31 km)でありながら、険しさゆえに一里が十里にも感じられるほど急峻かつ長大な山道であることが名前の由来になっている、険しい地形に位置します。現在、国道289号の新潟県と福島県の県境部の現道区間は19.1kmが通行不能区間となっていることから、大幅な迂回を強いられています。この通行不能区間を解消することで「地域間の交流・連携を支援」「救命救急体制の向上」「周辺観光地へのアクセス向上」を目的とした、新潟県、国土交通省、福島県による改築事業が行われています。
この改築事業のうち、通信関連工事を数件受注しているイートラスト社が、八十里越内に建設中のトンネル(8・9号トンネル)にPicoCELAを導入し、通信環境を整備する実験が行われました。

その導入経緯や今後の展望について、イートラスト社にお話を伺いました。

PicoCELAのメッシュWi-Fi技術で、LAN配線なしにトンネル建設現場へStarlinkの通信エリアを拡張

PicoCELAの導入経緯

衛星通信ではカバーできないトンネル内部からの緊急通報を可能とする通信環境の構築が必要

きっかけとなったのは「合同安全パトロール」です。弊社(イートラスト社)では年2回ほど「合同安全パトロール」を実施しています。これは弊社が受注している現場に経営陣が実際に足を運び、現場の安全確認を行う取り組みです。今回の「国道289号八十里越」の現場では、昨年7月に合同安全パトロールを実施しました。その際、現場の担当者から「トンネル内の通信環境の構築を希望する」との声が上がったことが、PicoCELA導入のきっかけです。当時、この現場には無線機や衛星携帯が配備されていました。しかし、無線機は外部との連絡は行えませんし、トンネルの全長は延べ3.5km以上もあり、そのような長距離をカバーできるものではありません。また、衛星携帯は「トンネル内では電波を受信できない」、トンネルの外に出ても「場所によっては衛星電波の補足ができず、通話ができない」状況でした。

トンネル建設現場における緊急通報のための通信環境整備

さらに、衛星インターネットアクセスサービスのStarlinkもトンネル入口付近の現場事務所に配備はしていましたが、接続するにはその配備場所まで行く必要があります。先に申し上げた通り、今回のトンネルは延べ3.5km以上あります。その奥側のエリアにいる際に緊急連絡が必要となった事態を想定したところ、トンネル入口まで戻るのに15~20分程度の時間を要するだけでなく、通信を開始するための準備時間なども合わせると、トータルで30分~1時間程度かかることが分かりました。それでは"緊急"連絡とはいえない状況でしたので、トンネル内部からの緊急通報を可能とする通信環境の構築が必要との声が上がり、PicoCELAの導入検証を行いました。

導入にあたって

半日程度で設置と通信確認が完了

現場での設営は、イートラスト本店の担当者が行いました。トンネル現場に持っていく前に社内で事前テストをしましたが、初めてのことなので取付金具の確認を行ったり、実際に機器同士の距離を離して通信を行い、どのような結果を得られるか実験したりしたため、全体構造を理解するのに半日ほどかかりました。一方で実際のトンネル現場では、その事前テストを行っていたことから全員が設営手順を理解しており複数の班に分かれて設営したところ、非常にスムーズに設営ができ半日程度で設置と通信確認が完了しました。

導入効果

防水防塵仕様で屋外利用可能、LAN配線不要で広域Wi-Fi構築が可能な通信機器

実証実験の期間内、一度も5台の設営位置を変更することなく、快適な通信環境が維持できています。
今回の現場は、冬場は工事が休止となります。実証実験は、秋の間の1週間程度の仮設設営でしたが、工事が再開する春からはPicoCELAを常設導入することを決定しています。
実証実験をしてみて分かったことは、PicoCELAは「防水防塵仕様のため屋外でも利用でき、LAN配線が不要なため広域なエリアにWi-Fi環境を構築できる随一の通信機器」だということです。
現場担当者からも、ネットワークを構築できたことで、「施工図や資料の確認が即座にできるようになる」、「現場と会社間の連絡がスムーズに取れるようになる」など、利便性が向上するとの声も上がりました。

トンネル建設現場における緊急通報のための通信環境整備

弊社は、電気・情報通信事業をコアに、防災や環境といった事業を行っている会社です。その意味で、弊社でもPicoCELA製品を取り扱わせて頂き、屋外への防災目的の通信環境整備などの提案をしていきたいと考えています。具体的には、弊社の防災製品や監視システムとPicoCELAを組み合わせて、河川氾濫監視システムなどの提案をしたいと思います。

実証実験概要

今回の現場のPicoCELA機器の設置は、当初コア1台、ブランチ4台を予定していました。しかし、実際に設営してみたところ、PicoCELA機器同士が当初予想以上に長距離で通信ができることが分かり、ブランチの台数を削減できました。

PicoCELAのメッシュWi-Fi技術で、LAN配線なしにトンネル建設現場へStarlinkの通信エリアを拡張

長距離での通信を可能にしたのは、指向性アンテナとPicoCELA機器の組み合わせです。トンネル内はゆるやかなカーブがあるのですが、そのカーブの先の道路まで1kmも電波が届いたのには驚きました。
また最も条件の良い場所では、1km以上もWi-Fiのエリア化構築ができました。トンネル内では反射する電波を効率的に伝搬し、想定以上にWi-Fiのエリア化ができたのだと考えられます。大型のインフラ工事を担当する事も多い私たちにとって、この検証結果は大きな成果だと感じています。またトンネル内とトンネルの外では、通信状況に大きな差があることも分かりました。常設後はこれらのデータを収集し、引き続き検証していきたいと考えています。

最後になりますが、屋外ネットワーク工事に関するお悩みがございましたら、ぜひイートラストへご相談ください。

販売店: SCSK株式会社

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