2024問題に対処するためには、1個の荷物輸送に係る人手を少なくすることが重要です。そのためには、物流システムを形成する2大要素である輸送サイド(トラック、鉄道、飛行機、船などによる輸送)と施設サイド(中継拠点やフルフィルメントセンターなどの施設)の両面から業務効率を改善しなければなりません。
輸送サイドの業務効率改善については、ドローンを使った航空輸送が多方面で検討されていることは皆さんご承知の通りかと思います。しかし、私が今注目している興味深い取り組みが「フィジカルインターネット」です。
インターネットはコンピュータ同士のコミュニケーションのために発達したテクノロジーですが、これを物流の世界に応用したものがフィジカルインターネットです。物流拠点間を行き交うトラックに積載する荷物をインターネットのルーティング技術を応用して最適化を図ろうとするコンセプトです。
フィジカルインターネットでは、個々の荷物を複数のトラックで中継しながら輸送します。これ自体は従来もやってきたことです。しかしフィジカルインターネットでは、各中継拠点において、個々の荷物の行先、積み替え先となる中継トラックの積載可能量や輸送能力、さらには当該中継トラックが次に向かう中継拠点での荷物の混雑具合、等に応じて最適な中継トラックを各荷物毎に都度選択します。この処理は、インターネット空間におけるルーターと呼ばれる中継装置が担っている処理に酷似しています。物流とは、インターネットのようなバーチャル空間で行われる活動ではなく、物理的実体である荷物を運ぶという現実空間で行われる活動ですので、フィジカル(物理)インターネットという名称が与えられました。
現在の物流における中継トラックの積載率は40%程度だそうです。フィジカルインターネットはこの効率を大幅に向上させる事を目標としています。物流業界全体を巻き込む壮大な構想であり、その動向については本ブログでも定期的にウォッチしていきたいと思います。
さて、物流の効率化を考える際にもう一つ重要な要素が施設サイドでの業務効率改善です。
物流施設では、倉庫にある在庫から新たな荷物を仕分けたり、中継されてきた荷物の積み替え作業などが行われます。これらの作業の自動化が業務効率改善の鍵となります。マテリアルハンドリング(マテハン)技術が大いに活躍する領域です。
マテハンとは、多種多様なセンサーやベルトコンベア、ソーター、パレット、AGV、AMRといった機器を連携させ、かつ調和させた巨大な機械システムです。昨今ではこれらの機器の通信にもインターネット技術が適用されますので、複雑で巨大なIoTシステムとも言えます。
IoTデバイスの多くは独自のゲートウェイ装置を必要とします。しかし、仕様が統一されておらず、複数のゲートウェイを同一空間に多数設置しなければなりません。これでは、マテハンを構築する際の手間が増えてしまい、システム全体のコストが上昇してしまいます。
ここにメッシュWi-Fiエッジコンピュータの活躍の場があります。
様々な機能をソフトウェアとしてアドオンできるエッジコンピュータですから、ゲートウェイ機能も実装することができます。様々なゲートウェイ機能を各エッジコンピュータで集約できれば、IoTデバイス毎にゲートウェイを設置する手間が省けます。さらにメッシュWi-Fi機能は、このようなエッジコンピュータを多数、空間的に遍在させることも容易にします。これらの特徴は、より大きなマテハンシステムであればあるほど、より有効となるでしょう。
2024年問題は今後さらに深刻さを増す可能性があります。フィジカルインターネットの実現やマテハンの高度化への期待は大きいと思います。当社のメッシュWi-Fiエッジコンピュータによって、この重大な社会問題の解決に貢献をしていきたいと思います。
著者
PicoCELA株式会社
代表取締役社長 古川 浩
NEC、九州大学教授を経て現職。九大在職中にPicoCELAを創業。
一貫して無線通信システムの研究開発ならびに事業化に従事。工学博士。