先日、クラボウテクノシステムズ様が販売を開始した災害備蓄Wi-Fi「Sona-L™(ソナエル)」を、福岡県直方(のおがた)市様へ寄贈いたしました。これは、PicoCELAの技術を活用した製品であり、自治体としては全国初の導入事例となります。
日本では今年11月に防災庁の発足が予定されており、防災に対する意識は国全体で高まりを見せています。また、昨今の夏場の異常な高温状況を肌身で感じると、温暖化の影響がすでに「待ったなし」の状況にあることを痛感させられます。
我々が長い年月をかけて整備してきた社会インフラは、いずれも設計当時の気候統計を前提として作られています。しかし、その想定を遥かに超える災害が発生すると、それらは脆くも破壊され、人命に関わる重大な被害を引き起こしてしまいます。大自然の猛威を前にすると、人間が築き上げたものがいかに儚いものであるか、切なさを感じずにはいられません。
もちろん、災害を未然に防ぐ備えは最優先です。そのために、堤防のかさ上げや、建物の耐震補強・老朽化対策などが全国で進められていることと思います。
しかし同時に、「災害後の備え」も極めて重要です。 特に昨今のライフラインにおいては、衣食住に加え、「インターネット」も不可欠な要素として数えられるようになりました。いかにインターネットが重要なライフラインであるか、近年の事例がそれを物語っています。
一昨年の能登半島地震の際には、道路寸断による孤立地域で通信インフラが途絶し、安否確認や救助要請が困難になるという事態が発生し、改めて通信確保の重要性が浮き彫りになりました。また、自然災害以外の戦時下にあるウクライナにおいても、情報の遮断が市民の安全や作戦遂行に致命的な危機をもたらすことが示されており、通信の維持は現代の危機管理における生命線と言えます。
今回寄贈した「Sona-L™」は、こうした災害発生直後に、迅速にインターネット通信を復旧させるための「備蓄Wi-Fi設備」です。 最大の特徴は、専門的なICT知識を持たない職員の方でも、簡単に組み立てて即座に広域な通信環境を構築できる点にあります。
さらに、このシステムは災害時のみならず、平時のイベント等でも活用可能です。いやむしろ、いざという時に迅速に稼働させるためには、日常的に使い慣れておくことが大切です。これは、「日常時」と「非常時」の垣根をなくす「フェーズフリー」と呼ばれる防災の新たな潮流にも合致します。
「Wi-Fi通信環境を備蓄する」―この斬新なアイデアが日本全国に普及し、災害時の二次被害を少しでも緩和することに貢献できればと考えています。直方市様での取り組みを「直方モデル」として、全国の防災力向上につなげていきたいと思います。
著者
PicoCELA株式会社
代表取締役社長 古川 浩
NEC、九州大学教授を経て現職。九大在職中にPicoCELAを創業。
一貫して無線通信システムの研究開発ならびに事業化に従事。工学博士。




